AL KOOPERアル・クーパー『I STAND ALONE』あまりにも有名な『I STAND ALONE』のアルバムジャケット。自由の女神に扮したアル・クーパーの姿が目に入る。これは当時ニューロックの象徴として、レコード会社のキャンペーンとして用いられたジャケットだからです。多分1970年前後のロックファンだったら知らない人はいないでしょう。 音の方はどうかというと、これもまた1969年の作品とは思えない、斬新なAORサウンドです。1969年でこのハイセンスな音作りにびっくりです。有名なアルバムのわりにはそれほどセールスが上がらなかったのも、当時としては進みすぎたサウンドだったからでしょうか。 アルバムの序曲「OVERTURE」では時代を感じる事が出来る。男と女の笑い声に狂ったアメリカ人の姿が見て取れる。続いて女の悲鳴、続いてシュプレーヒコールに当時の状況(ベトナム戦争)が見える。《これがアメリカなのか、これが民主主義ってやつ、これが平等てもんか、俺たちが欲しいのは自由だ。》そして不協和音に続いてどこか冷め切ったモダンジャズの演奏。 「I STAND ALONE」もどこか諦めきった世紀末の取り残された心情を歌にした感じです。 《I STAND ALONE》 ♪ああ、僕はただひとり、ここに ひとりぼっちで立ち尽くす 誰にも変えられやしない 僕の気持ちを、僕の愛を みんな大事なものを忘れている 足で踏みつけにしているんだ それがどんなに大切か 考えてみることもせずに この狂った世界の中で 引きずり込まれまいと 僕は死ぬほど努力した あの子の愛を勝ち取りたくて 誰も僕を連れていくことはできない 僕が行きたくもないところへなんか♪ 曲の最後はジェット機の爆音で終わります。これは戦闘機か? 「ONE」は【ニルソン】の曲ですが、【スリー・ドッグ・ナイト】などにもカバーされていますね。この曲も最後はけたたましい雷のイフェクトで終わっています。 「SOFT LANDING ON THE MOON」(月面軟着陸)なんていう神秘的なインストゥルメンタルナンバーもある。これは当時のアポロ計画の月面着陸にインスパイアーされたものでしょう。 雰囲気たっぷりのフォークナンバー「RIGHT NOW FOR YOU」から「HEY, WESTERN UNION MAN」の隙間無く続く展開も見事。 このソロアルバム以前にB・S&Tを結成したアル・クーパーですが、ホーンの使い方などに、B・S&Tを思い起こさせるものの、さり気ない使い方に留まっています。 アル・クーパーの声はすべらかで軽やか、音の多彩さに負けてしまっているのがやや弱みでしょうか。 アイデアが一杯ありすぎてどうしようもないといった感じのアルバムです。 でもよーく聴いてみると、時代を感じさせるコンセプトなのかなとも思えます。 ジャンル別一覧
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